家元の寵愛≪壱≫



お風呂から出た私は一通りの事を済ませ、

ベッドサイドに腰を下ろした。


時計に視線を向けると、23時20分。

未だに隼斗さんは帰って来ていない。


仕事でトラブルでもあったのかしら?

いつもなら疾うに帰宅している時間なのに。



電話でもしてみる?

いや、ダメ。

仕事の邪魔をしちゃう。

じゃあ、メールだけでも……。

それも、ダメ。

仕事が終われば帰って来るだろうし、

もし、誰かと飲みに行ってたりでもしたら

きっと、場の雰囲気を壊してしまうに違いない。


それに、重い女だと思われちゃうよ。


恋人ならともかく、私は妻なんだから

ドンッと構えて待ってないとね。



いつ帰って来てもいい様に

玄関と廊下の明かりを灯しておき、

室内を暖かくして休む事にした。



元々寝つきの良い私。

バイト漬けの生活をしていた頃は平均睡眠時間が3時間。

お陰で寝れる時にパッと寝るという習性を培った。


だから今日も、誘われるままに夢の世界へと。