幾度か角度を変え、言われるままに動くと
「ん、ご苦労だったね」
「ッ?!」
「ゆのちゃん、もういいわよ」
「えっ?」
俯き加減だった私は顔を上げると、
目の前でお三方が笑顔を向けて来る。
本当に、私はここへ何しに来たの?
私の表情を察してか、家元が口を開いた。
「今度の私の作品のインスピレーションに協力して貰ったんだよ」
「へ?………インスピレーション?」
「うむ。茶道と違って華道は、生ける花や花器、季節によっても大きく表情を変える」
「………はい」
「勿論、大会や祭典の趣旨も考慮しなければならないしね」
「………」
「依頼先のイメージに合ったものを生けるのは華道家の腕次第という事だ」
「……はぁ」
華やかに見える世界も茶道と同じで
日々のたゆまぬ努力の上に成り立っている。
持って生まれた才能だけでなく、
日々の努力はこうして、自らが探し求めている訳だ。
「あの……私はお役に立てたのでしょうか?」
「うむ。和服姿だったらまた一味違ったのだろうけどね」
「………そうですよね」
けれど、表情はとても晴やかなので心から安堵した。



