「お待たせして、申し訳なかったね」
「いえ。相変わらず、涼やかな花姿ですわね」
お義母様はサラッと言葉を紡ぐ。
私は生けられた花に目を奪われていた。
本物の生け花を見たのも初めてだし、
家元というプロ中のプロの技を拝見出来たのも
ある意味、藤堂の嫁としての特権。
隼斗さんと結婚してなかったら
こうして、華道家と顔を合わせる事すら無いんだから。
私はお義母様の隣りで静かに会話を聞いていた。
けれど、何故か、家元の視線は……。
………どうして?
私、何かしたかしら??
物凄い眼力で見つめられると、
金縛りに遭ったみたいに動けない。
視線すら外せず、ただただ家元を見つめ返していた。
すると、急にフッと柔らかな表情に変り、
「ゆのさんと言ったかな?」
「……はい」
「怖かったかい?」
「え?………いえ」
実際、怖いというより訳が分からず……と、
言った方が近かったのかもしれない。
家元が何をしたかったのか、
私は何故、ここに連れて来られたのか。
不思議で不思議で堪らない。



