家元の寵愛≪壱≫



「御免下さい」

「はぁ~~い」


お義母様が声を掛けると、中から女性の声がした。

少しして出迎えて下さったのは家元夫人。


「遅くなって、申し訳ないわねぇ」

「いいのよ~、さぁさぁ上がってちょーだい」


柔和な表情で手招きする夫人。

それに倣うように私達は部屋の奥へと招かれた。


長廊下を突き当りまで進み、そして右へ。

またまた長廊下をまっすぐ道なりに進み、今度は左へ。

藤堂の家と違って平屋の家だからなのか、迷子になりそう。


家元夫人、お義母様、私の順で進み、

着いた先は―――――家元がいる部屋。



漆塗りの盆の上に色とりどりの花が乗せられ

その盆の左隣りにある、平皿のような花器に

次々へと花を生けている家元。


私達の入室にも気付かぬようで

真剣な眼差しで花を手にしていた。



暫くして、生け終ったのか

花器をそっと持ち上げ、床の間へと飾った。


すると、