家元の寵愛≪壱≫



「あぁ~何だろうなぁ……。隼斗が気の毒に思えて来た」

「へ?」


―――――気の毒?

どうして??


不思議に思い、顔を上げると


「そういう『女』の顔は、アイツの前だけにしてやれよ?」

「ッ?!」

「んじゃあな。隼斗にヨロシク!!」

「あっ………はい」


頭を軽くポンポンされ、

圭介さんは颯爽と歩いて行ってしまった。


―――――女の顏って、どんな顏?


圭介さんの言葉の意味は解らないけど、

とりあえず、お目当てのものはゲット出来た。


ゴンドラエンドに陳列されている本に視線を向けると、


んッ?!!

えぇ~っ??!!!

もしかしなくても、車雑誌ってコレだけ?


……ゴンドラエンドに陳列されている本の殆どが

ガーデニングの本ばかりだった。

春に向けての植え替えの本だったり、

今流行の果樹栽培の本ばかり。


その中に1冊だけ車が表紙の雑誌が。

これなら、圭介さんじゃなくても解る。

何で私はここをスルーしたんだろ?


不思議に思いながらも、

その本を大事に胸元に抱きしめてレジへと向かった。