家元の寵愛≪壱≫



ふと、脳裏に浮かぶ “黒い影”

―――――――圭介さん。



ハッとした俺は、彼女の身体を離し


「じゃあ、もう1つ聞くけど、首の絆創膏は?」

「へっ?」


携帯を見たとは言えず、

かと言って、納得したワケでも無い。


『キスマーク』を隠そうと

絆創膏を貼ったのでないなら、

一体、アレは何だというんだ?


首を怪我することなんて思いつかない。

俺はゆのの肩をがしっと掴んだまま

彼女の瞳から視線を外せないでいた。


すると、


「私、今までお洒落する事自体無かったので、アイロンで巻いた事無かったんです」

「アイロン?」

「はい。クルクルした巻き髪ですよ。お義母様はいつも凄く綺麗に巻いてくれますが、自分では巻けないので……」

「………で?」

「玲に巻き方を教わったんです」

「…………」

「首の絆創膏はその時の火傷のものです」

「ッ?!」


―――――火傷?!

俺の為に、色白の柔肌に火傷を負っただと?



それなのに………。