「実はうち(藤堂家)がお世話になっている紫泉堂(お香専門店)さんにお願いして、オリジナルのお香を作らせて貰ったんです」
「は?」
「私、隼斗さんへのプレゼントは『手作り』って決めていて。だけど、1人では出来るモノにも限界があるし」
「それで?」
「お義母様にお願いして、口を利いて頂きました」
「…………」
「隼斗さん、“枇杷”がお好きですよね?」
「ん?……ん。………はっ?!もしかして、この香り……」
「はい。もしかしなくても……」
ゆのはニコッと微笑み、そして……――……。
「ッ?!…………ど、どうした?………ゆの」
ゆのはゆっくりと俺に近づき、
そして、煽るように瞼を閉じ、俺に抱きついた。
こんな風に大胆な行動をする彼女じゃないだけに
俺自身、驚くと共に物凄い動揺。
すると、彼女の身体からもふわりと
甘く爽やかな枇杷の香りが漂って来た。
そんな甘い香りと共に
久しぶりの密な時間を身体全体で感じようと
俺もまた、ゆっくりと瞳を閉じた。
その時―――――。



