家元の寵愛≪壱≫



無言のまま襖を閉め、既に温められた寝室へ。


畳上に向かい合う形で腰を下ろした。

正座のゆのは、膝の上でギュッと手を握りしめて。


そんな彼女を見つめながら、俺は深く息を吐いた。



「あのさ、ゆの」

「あっ、はい!!あの、えっと、これはですね?!」


慌てた様子で口早に。


「いいから、俺の話を聞けって」

「ッ?!…………はい」


俺は鋭い眼光を浴びせ、

彼女の言葉を制する形で言い伏せた。


―――――そう、自分自身に言い聞かせるみたいに。

『大丈夫…………大丈夫』と。



出逢って4カ月で『夫婦』になった俺ら。

世間ではこれを『スピード婚』と呼ぶらしい。


けれど、俺達にはきちんとした『愛』があった筈。

いや、今でも………きっと。


だから、俺はあの時、

2人で確かめ合った想いを信じたい。


例え、どんなに時が経ったとしても

色褪せる事の無い『愛』があるのだという事を。



俺は今一度、深く息を吐き――――