家元の寵愛≪壱≫



今日の大胆な服装といい、

このムード満点な部屋といい、

恐らく、彼女なりに俺をその気にさせる作戦のようだ。



けれど、腑に落ちない点が1つ。


今日は2月12日。

俺の誕生日でなければ、結婚記念日でも無い。

初めて愛を確かめた日でもないのに……。


記念日らしい記念日を思い出してみるものの

当てはまるものは1つも無い。



俺は自分自身に置き換えて思考を巡らす。


こんな風にする時って……。


記念日でなければ………おねだりか?

いや、待て。

先日の疑わしい1件をここに当てはめるとすると、


はっ?!

――――――――謝罪か?!


若気の至りで浮気をしたものの、

やはり、罪悪感に駆られ

夫である俺に対しての罪滅ぼし?



精神的なストレスが既に限界のようで

思考がとんでもない方向に暴走し出す。


心の奥で『ゆのに限って』と思う反面、

こんなに可愛いゆのを

世の中の野獣共が放っておく筈がない。


―――――――俺はそう思わざるを得なかった。



そして……。