思わず、身体がピタリと止まる。
職業病とでもいうのか、
茶や香の香りには敏感に反応してしまう。
ここが茶室ならともかく、
居間には不釣り合いの上品な香り。
「母さん、何?……この香り」
「あぁ、これ?ウフフフッ……戴き物よ。素敵でしょう♪」
少し自慢げに話す素振りにイラッと来るが、
僅かに香るその香りに心が反応してしまう。
何とも言えない、癒される微香に。
母親の自慢話に付き合い切れず、
俺は踵を返し、母屋を後にした。
―――――――ガラガラガラガラッ
離れの玄関戸を開けると、
「お帰りなさいませ」
「ッ?!!」
ゆのが玄関で、三つ指を立て挨拶を。
「たっ……だいま」
いつもと違う、古風な出迎えに
思わず、声が吃ってしまった。
すると、



