家元の寵愛≪壱≫



無意識に指先が辿り着いた先は、

どこにでもあるような絆創膏。


俺は何事も無かったように照明を落として、

ゆのの首下へそっと腕を差し込んだ。



すると、ゆのは俺の方へ向き直り、

寄り添うように身体を預ける。


ふわりと彼女の髪からシャンプーの香りが漂い

それがいつもの香りである事に安堵する俺。


彼女の柔らかい髪を撫で、

そっとおでこに唇を添えた。


俺の腕にすっぽりと収まるゆの。

その華奢な身体に不釣り合いの豊かな胸。


触れるその部分は、

何とも言えない幸福な感触。


そればかりでは無い。

彼女の身体は俺のエネルギーそのもので

触れずにはいられない魅惑な力。


いつもと変わらぬ、このぬくもりを

決して、手放したくはない。


彼女をきつく抱きしめ、

不安を掻き消すように静かに瞼を閉じた。



この世に『神』の存在があるのならば、

俺は何度だって願いを請う。



この命が尽きるまで……。