家元の寵愛≪壱≫



「ごめんなさいッ!!」

「ん?」

「今日はホントに無理なんです」

「………」


俺に盾突く事なんて無かったゆのが

『私も譲れない』と、言い出した。



「理由は?」

「り、理由ですか?」


俺の質問に彼女は口を噤んでしまった。


後ろめたい事が無ければ、言えるだろうに。

彼女の行動1つ1つが俺の不安を煽り始めた。


鋭い眼光でゆのを見据えると、


「おぉおっ、お義母様とがっ、外出予定になってます!」


ゆのはどもりながらも言い切った。


しかも、相手は母親だという。


「母さんと?」

「は、はい」

「どこに?」

「ど、どこって……く、詳しくは……」

「へぇ~」


ゆのの慌て様から察するに、

俺に何かを隠しているのは確実だな。


「じゃあ、俺が母さんを説得するから」

「へっ?」

「母さんがOKならいいんだろ?」

「えっ、あっ、えっと……」

「ん?」


犯人を断崖絶壁へ追いつめるように

俺は容赦なく、ゆのににじり寄る。


そんな俺を怯えるように見据え、