家元の寵愛≪壱≫



あくる日。


いつもと変わらぬ様子のゆの。

俺の不安を余所に、

愛らしい笑顔を覗かせる。



気を利かせてくれた父親のお陰で

久しぶりの休日を満喫出来そうだ。



「ゆの、どこに行きたい?」

「えっ?あっ、えぇ~~っと……」


俺の問いかけに、急に目が泳ぎ始めた。


「ん?」

「あの……」

「ん、言ってみ?」


眉根を下げ、

申し訳なさそうな表情を浮かべ、


「今日、お仕事かと思って、昼過ぎから用事を入れてしまったのですが…」

「はっ?」

「……ごめんなさい」


潤んだ瞳で俺を見つめている。


「用って、何の用?」

「えっ?」

「大した用じゃなければ、また今度にしろよ」

「えっ、でも……」

「俺に休みが無いのは分かるだろ?」

「………はい」


俺の刺々しい口調にシュンとなるゆの。


けれど、俺の代わりに

今日1日親父が点ててくれるんだ。


俺だって、余程の事じゃなきゃ、譲れねぇ。



お互いに無言のまま、見つめ合ってると