家元の寵愛≪壱≫



ゆのを起こさないように

そーっと、襟元を広げた。



―――――無い。

はあぁぁ~~ぁ~。

やはり、俺の気にし過ぎか。


圭介さんは昔から“痕”を付けるので有名。

ふと、それを思い出して

俺は確認せざるを得なかった。


もしや、ゆのにも……。


けれど、俺のとりこし苦労だったようだ。



胸元の涼しさを感じてか、

ゆのが寝返ろうと肩を捻った。

その瞬間―――――


ん?

んん??


俺の脳内に再び、『?』が飛び交い始めた。


おいおいおいおいッ。

一体、ゆのの身に何が起きたんだよッ!!



俺は再び、ゆっくりと襟元を広げると

ゆのの白い肌に不釣り合いの真っ黒な下着。


それも俺の視線を釘付けにするほどの。


ゆのはこんな下着を持ってたか?

って、持ってる持ってないなんて事はどうでもいい。

母親が勝手に押し付けた事もあるだろうし。



それにしたって、腑に落ちないのが

ゆのが自らこんな大胆な下着を身に着けるだろうか?

俺が頼んだって、断固拒否するのに……。