返事が無い。
無言のまま、俺の胸元に顔を埋めて。
いつからこんなにも甘え上手になったんだ?
掻き消したハズの想いが
再び、チラチラと姿を見せ始めた。
男を誘う『上等なセリフ』
男をその気にさせる『無言の圧力』
しかも、ベッドの中で……。
今までの俺なら今のセリフも
スイッチが入る合図になったに違いない。
けれど、今の俺は180度違う角度で見てしまう。
『野獣』と呼ばれる圭介さんに、
純粋無垢のゆのが開発されたんじゃ……。
無意識に眉間にシワが寄ってしまう。
信じたいと思っていても、心が勝手にあらぬ方向に。
すると、
………ん?
はっ?!
おいっ、マジかよ。
俺の胸に寄り添うゆのは、
気持ち良さそうに寝息を立てて寝てしまった。
まだ、22時を回ったばかりだというのに。
密な時間とでもいうべきこの時間に
スヤスヤと完全に寝入っている。
ますます思考があらぬ方向に……。



