「何か、悩み事ですか?」
「ん?」
「先程から、難しい顔をしてますよ?」
『難しい顏』……ねぇ……。
ゆのの携帯を見たとは言えず、
メールの事を問い質すことも出来やしない。
それに、さっきの甘い香りだって
よくよく考えれば、大した事じゃないし。
買物中に香水を試しに振りかけただけかもしれないし。
けれど、胸の奥が重く淀んで
彼女に対して、疑心暗鬼になっていた。
「あのさ」
「はい?」
「車があったけど、何で出掛けたんだ?」
「えっ?あっ、車ですか?玲が家まで迎えに来てくれたので」
「玲って、圭介さんの妹?」
「はい」
可愛い笑顔を見せ、素直に答える所を見ると
『浮気』はしていないようだな。
はやり、俺の気にし過ぎか?
今は彼女の言葉を信じたい。
5歳も年下の幼な妻に対して、
これじゃあ、嫉妬心丸出しだよな。
フッ、マジでカッコ悪い。
畳上に仰向けに横たわる俺の横に
ゆのはちょこんと正座した。



