家元の寵愛≪壱≫



「ゆの」

「はい」

「何だ?……この匂い」

「えっ?」



彼女の身体から甘い香りが漂って来る。


普段の彼女からは想像も出来ないような

エキゾチックな魅惑な香りが。



「………匂いますか?」

「………」


おかしいな?とでもいう風に

ゆのは自分の身体をクンクンと嗅いで。



「ごめんなさい。すぐにシャワーを浴びて来ますね?」

「ッ?!」


ゆのはニコッと愛らしい笑顔を向け、

小走りに浴室へと向かって行った。



『シャワー』

耳に残るその響きに

漸く治まりかけていた感情が、再び暴れ出す。


考えたくもない現実と弾け出す感情が

俺の身体を拘束する。


ゆのは一体、何を……。


俺は暫くその場に放心状態でいた。






その後、いつもと変わらぬ様子のゆの。


挙動不審な行動も見受けられず、

俺1人、モヤモヤとしている。


せっかくの週末だというのに。



鏡台前で就寝前の肌の手入れをしているゆの。

そんな彼女をチラ見しながら、

俺はいつも通り、腹筋を。


すると、