家元の寵愛≪壱≫



「ゆのちゃんじゃなくて、残念だわねぇ~」

「………」



チッ!!

んだよッ!!

母さんかよッ!!!


喜んで損したじゃねぇか。


急上昇した胸の高鳴りが

母親の顔を見て、一瞬で急降下。



「気落ちしたところ悪いけど、ゆのちゃんの帰り、夕食頃ですって」

「はっ?」

「さっき、電話があったの」

「何で母さんのところに?」

「さぁ?隼斗がまだ帰ってないと思ったんじゃないかしら」

「………」



何で俺の携帯じゃなくて、母さんなんだよ。

ますますイライラが募る。



「あっ!!ゆの、どこにいるって?」

「迎えに行く気?」

「悪いかよ」

「別に~」



あからさまに馬鹿にした感じの表情だが

今はそんな事、気にもならない。


今は何より、

『ゆの欠乏症』をなんとかしたいだけ。



「で、どこだって?」

「さぁ~」

「さぁ~って、聞いてねぇのかよ」

「別に子供じゃないんだし、たまにはのんびりさせてあげないと」

「………」