「はい」
「もしもし?」
いつもながらに男前のテールボイス。
その声を耳にして、一瞬怯んでしまった。
けれど、言うべき事は言わないと。
それが例え、先輩だろうが関係ない。
ゆのは俺の『妻』なんだから。
「あの、圭介さん、隼斗です」
「ん、どうした?」
「今、大丈夫ですか?」
「おぅ、平気だ。んで、どうした?相談事か?」
「あっ、いえ、相談事では……」
「ん?」
圭介さんの口調からして、
何かを隠しているようにも思えない。
そもそも、圭介さんは『仁義』を通す人。
女を騙す事はあっても、
男友達は決して裏切らない。
そんな人がゆのに手を出すだろうか?
携帯を握りしめたまま、
ふと、そんな事が脳裏を過った。
「おい、隼斗、どうした?何かあって、かけて来たんだろ?」
「あっ……はい」
いつもと変わらぬ相手の口ぶりに
言いたい事が消え失せてしまう。
俺は深呼吸して、意を決した。



