家元の寵愛≪壱≫



「あっ、うちの家内、パティシエなんです」

「えぇ~そうなんですか?!」

「あっ……はい、一応」


はにかむ奥さん。

シェフの夫にパティシエの妻。


「素敵なご夫婦ですね」

「とんでもない……好きなだけです」


他に誰もいないという事もあり、

俺ら4人で珈琲を口にしながら、

他愛ない話をまったりと。


お言葉に甘えて、

ゆのがフルーツタルトをリクエストし、

そのお礼に俺がお茶を点てる事にした。


いつでもお茶が点てれるように、

簡易の茶の湯セットが親父の車に積んである。

勿論、俺の車にも。


―――――こういう時の為に。


『一期一会』

一生に一度きりの出会いに感謝して

最高のおもてなしをするという茶道の心得。







「ゆの着替え終わったか?」

「はい」


俺らはゲレンデ目指して、コテージを後にした。