家元の寵愛≪壱≫



毎日、こんな疲れ切ったゆのを見ると

本当に申し訳なく思ってしまう。

本当にこれで良かったのだろうかと…。



前髪をそっと横へ流し、指先は頬の上を滑らせ

ぷっくりとした小さな唇に僅かに触れる。


すると―――――、


ゆのは何かを食べている夢でも見ているのか

俺の人差し指をペロッと舐めた。


ッ!!!!

ッくぅ~~~~~!!


寝ながら俺を誘っているのか?

ったく、この小悪魔め!!



俺は軽く吸い上げるように

チュッと乾いたリップ音を部屋に響かせ

欲情を押し殺しながら口づけをした。



はぁ~~~ぁ~~~。

俺ってつくづくツイテねぇー。


ゆのが処女だと言うから籍を入れるまではと

毎日、理性崩壊の限界まで我慢したのに。

家元襲名披露の宴の日に…

と、決めていたのにも関わらず、

祝い酒でヘロヘロになっちまったし…。

ゆのも翌日から稽古でクタクタでバタンキュー。


未だ“夫婦”なのか“恋人”なのか?

………分からない。