家元の寵愛≪壱≫



夕食後は、1日を振り返る反省茶がある。

父であるご隠居と少し薄めの茶を戴きながら

翌日の稽古の目標を立てるのが最後の日課。



1時間程して漸く離れに戻ると、

ゆのは気疲れからなのか、

毎日居間で気持ち良さそうに寝ている。


今日も俺の帰りを待っていたようで、

淡いピンク色のパジャマ姿で…。



「ゆの、風邪ひくぞ」


とりあえず、毎日声を掛けてみるが起きた例がない。

俺は仕方なく、ゆのを抱き上げベッドへ運ぶ。


ベッドへ寝かせても全く起きる気配も無く、

気持ち良さそうに眠り続ける俺の愛姫。



ホント……疲れてるんだなぁ。


高校を卒業と同時に籍を入れ、

入籍と同時に家元夫人という…

重荷を背負う事になったゆの。


まだ18だというのに……。



香心流は一門も含めおよそ1000人。

その大所帯の頂点を支えるのだから、

並大抵の努力では務まらない。