家元の寵愛≪壱≫



「“はい”って、何で素直に言えねぇんだよ」

「だ、だって、プロポーズなら卒業式の日にして貰いましたし…」

「言ったらマズいのかよ?」

「えっ、いえ……でも…」

「ん?」

「私に疾しい事でも?もしかして……浮気?」

「プッ……んなワケねぇだろ」

「だってぇ~~」

「はぁぁ~~もう、ホントにムードのない奴だなぁ」

「ッ?!!」


驚くゆのを余所に、俺は意地悪く

抱き寄せる腕をはらりと解いて。


「せっかくのクリスマス・イヴが台無し」


少しワザとらしく膨れて見せて

ゆのに冷たく背を向け、歩き出す。


「えっ、は、隼斗さ~ん!!ごめんなさい!!」


慌てて俺に駆け寄り、

俺の上着の裾を遠慮がちに引っ張って。


フッ、俺が拗ねてると思ってる。

俺的には別に気にしてないが……。


さらに軽く無視して、

数メートル歩いた所で。


「キャッ!!」