家元の寵愛≪壱≫



隼斗さんは相槌をして耳を傾けてくれている。


「私、隼斗さんの力になりたいです。家元の妻として、きちんと『自分』という器を作りたい…」

「ん」

「外国語学部では足りない気がするんです」

「そうか?」

「はい。もっともっと、日本の文化や茶道の事も。学ぶべき事は沢山あるのに…」

「ん」

「勉強出来る環境があるのに、目を瞑ってはいられなくて…」

「フッ、ゆのらしいな」

「そうですか?」

「あぁ」


柔らかい笑みを零した彼。


そんな彼に…


「だから私、人文学部の日本伝統文化学科へ転部しようかと思うんです」

「………」



私の瞳をじっと見つめる隼斗さん。


無言なのは、やっぱり反対なのかな?

そんな簡単に意思をコロコロ替えるのは

やっぱり良くない事だもんね。


彼の瞳をじっと見据えていると、