家元の寵愛≪壱≫



「そうか。なら、今まで通りでいいんじゃねぇの?」

「……本当に?」

「あぁ、俺は構わないけど?」


柔和の表情を見せる隼斗さん。


「実はもう1つ、大事なお話があります」


私はゴクリと生唾を飲み込んだ。


「ん?……何?」


隼斗さんは私の手を握り


「実は私、転部試験を受けようと思っています」

「転部試験?」

「はい。2年次に進級するにあたり、学部を変えようかと」

「えっ…ってか、何で急に?」

「急じゃありません。もう半年以上、考えていた事です」

「………」


隼斗さんは驚いて唖然としている。


「ごめんなさい。勝手に決めて」

「あっ、いや…それはいいんだけど…」


ギュッと握りしめられる手をギュッと握り返して


「理由、聞いてもいい?」

「はい。入試の際は何も考えず、将来、役に立つだろうと安直に考えて決めました」

「ん」

「でも、隼斗さんと結婚して、自分のこれからの人生を少しずつ考え始めたんです」

「ん」