家元の寵愛≪壱≫



「えっと……実は…」

「ん?」

「私が特別学費免除で入学しているのをご存知ですか?」

「ん?…あぁ、それなら知ってるが…」

「それで、教務課に問い合わせして、特例で後期から少しカリキュラム変更し、授業数を増やして貰ったんです」

「何で?」

「何でって…タダで勉強させて貰ってるのに、最低限の勉強しかしないなんて、罰が当たりますから」

「…へ?」

「だから、自分に出来る事に一生懸命頑張ろうかと…」

「それだけ?」

「えっ?それだけって……他に何かありますか?」

「えっ……いや、別に…」



そうだよなぁ~……。


ゆのは元々、根が真面目な子だし、

変な事を考えるような子じゃ無いし。



「まぁ、あまり無理はすんなよ?」

「はい、大丈夫ですよ?最近は稽古も殆ど無いし、お夕食までには帰れるようにしてますから」

「ん、なら別に構わないが…」



帰りの車内は、

日頃の稽古の話や大学の話に花が咲いた。