家元の寵愛≪壱≫



俺とゆのは洞窟観音を参拝して

再び、2時間ほどのドライブに。


そして、その車内で……。

俺はここ数週間の疑問を訊く事にした。


「なぁ、ゆの」

「はい?」

「最近、急に帰りが遅くなってるみたいだけど…」

「えっ?…じ、授業がぎっちりあるので…」

「ん?だけど、後期が始まってすぐはこんなんじゃ無かったろ?」

「そう……でしたかねぇ?……気のせいですよ」


……怪しいだろ、今の返答。


最近のゆのは2時限で終わる曜日も

毎日のように5時限まで大学にいる。


俺はこっそり講義の日に

教務課で調べてみたが、

きちんと授業には出席している。


可笑しすぎるだろ……。

急に増える授業数とまだ1年生という事。

3年の後期4年の前期なら単位が足りなくて

授業に出るという事ならともかく。


もしかして、家にいるのが嫌なのか?

俺はそんな風に考え始めていた。


母さんや使用人とも仲が悪い感じでも無いし

一体、ゆのは俺に何を隠しているんだ?

気になって仕方がない。