家元の寵愛≪壱≫



大学へ到着した私は案内係の女の子2人に

持参した着物を着付けて……。


教授と共にお客様のお出迎え。


緊張しながらも何とか無事に終えて、

正午を少し過ぎた頃、やっと解放された。



「ゆのちゃん、この着物もう少し借りてても良い?」

「あっ、私も~」

「うん、いいよ。夕方までにここに吊るしておいてくれたらいいから」

「「ホント?!」」

「うん」

「やったぁ~!!もう少ししたら彼氏が来るんだぁ~」

「あっ、私も~」

「えっ、そうなの?」

「うん、だから、着物姿見せたくて////」

「私も私も~。滅多な事が無いと着れないもんねぇ~」



2人はこれから彼と学祭デートするんだぁ。

いいなぁ~……。


隼斗さん、今頃、お仕事の真っ最中だよね。


急に声が聞きたくなって、

携帯を袂から取り出したけど

やっぱりやめよう……。

仕事の邪魔はしちゃダメだよね?


私は2人と別れて、

玲のいる模擬店・クレープ屋さんへと。