家元の寵愛≪壱≫



1限目は演習に必要な事柄の説明。

2限目に模範演習として、

隣りの部屋に設けられた茶室にて

学生全員分のお茶を点てた。



『伝統文化演習』の授業は、

外国語系…学部の学生が、

将来、国際的な職業に就いた場合に

日本の文化を広めるきっかけを作る為、

演習(実践)という形で取り入れられたもの。



半年という短い期間ではあるが、

日本人としての誇りと

最低限の茶道マナーを身につける為、

学生には実演という単位修得試験が用意されている。

なので、回数が少ない分、皆必死に…。


大学側も、婚姻は別に問題ないと言う。


俺が講師という立場とプライベートを

キッチリ守れば問題ないらしく、

ゆのには生徒の模範実演を期待しているらしい。


何せ、家元夫人だから……。


そして……俺の目論み通り、

男子学生からゆのを守る為、

結婚している事を公にして……。


今日より、

俺ら夫婦は公然の夫婦となった。