家元の寵愛≪壱≫



「ですが……」



俺は教室内を見回して…



「恋人はいませんが、愛妻はいます」

「「えぇぇぇ~~~ッ!!!」」

「今年の春に結婚したばかりです」



教室に悲鳴にも似た声が響き渡る中、


俺は……―――――……



「ですよね?」



ゆのに向け、極上の笑みを…。

すると、

一斉に生徒がゆのの方へ視線を向けて、



「藤堂ゆのさんは私の妻です。どうぞ、皆さん仲良くして下さいね。…では、授業を始めます」




騒然とする中、俺はホワイトボードに

茶の湯に関しての要点と茶道の歴史に関して記し、

クールな表情で淡々と授業を始めた。








「では、今日の授業はここまでとします」


俺は軽く会釈して、部屋を後にした。