家元の寵愛≪壱≫



―――――――そう、彼女とは…

俺の愛しの妻・ゆの。

そして、ここは…ゆのが通う大学の構内。



先月、茶道協会の集まりの時に

清鈴流の次期家元と仕事の話になり、

稽古の他に大学で演習をしていると聞かされた。


へぇ~そういうのもあるんだと、感心していたら

何とその大学がゆのの通う大学と聞いて驚いた。

しかも、ゆのが以前に

『伝統文化芸能』の授業を選択したと話していたから。


俺は願っても無いチャンスを手に入れる為

来春に行われる『文化祭典』の茶席を

清鈴流へ譲る事で話をつけた。


香心流は清鈴流に比べ規模が大きい。

したがって、祭典規模の茶席も良くある。

親父に相談したら1つくらいなら構わないと言うので、

俺はすぐさま大学へ申し出た。


大学の方も、より名の通った香心流が…。

しかも、次期家元ではなく、

『家元』直々という事で…

突然の講師変更も快諾してくれた…というワケ。


で、俺はゆのに秘密でこっそり大学へ通い

手続きを済ませて……今日に至る。



そして―――――――

何も知らされていない彼女はというと…