家元の寵愛≪壱≫



さて、中にいる者達は一体、

どんな反応を示してくれるだろうか?


俺はドアの前で目を瞑り、

深呼吸をして、心を静めた。


今から3時間は、

香心流 家元・香雲として

仕事を全うする……そう、心に念じて。


―――――よし、参る!!



俺はドアを開け、室内へ足を踏み入れた。


ガヤガヤ、ザワザワしていた室内は

俺の登場で一瞬にして静まり返り、

次の瞬間―――――、


「「キャァァ~カッコイイ~!!」」


若い女性の声が室内に響き渡った。

俺は一段高くなっている壇上へ。


約30人程の若い男女の視線を浴びる中、

俺は柔らかい表情で挨拶を口にした。



「本日より、後期の伝統文化芸能の演習を担当します、茶道 香心流 17代『香雲』と申します。皆さん、どうぞ宜しく…」


笑顔で室内を見回した。


すると―――――、

部屋の右端に硬直した女性が1人。


俺は不敵に微笑んで彼女を見据えた。