家元の寵愛≪壱≫



車内に乗り込むと新車特有の匂いが。

ハンドルを握り、ミラーを調節。


ウフフッ、やっぱり凄く嬉しい。

バイトで貯めてた貯金で免許を取ったから

車は暫く無理かなって諦めてたけど。


運転席のドアから隼斗さんが



「良かったな」

「はい」



思わず、満面の笑みが零れちゃう。


すると―――――

助手席側のドアを開けたお父さんが



「じゃあ、ゆの。父さんとそこら辺をひと廻りして来ようか?」

「えぇぇーっ!?」

「んっ?!」



父親の言葉に突然大声を上げた隼斗さん。

双方のドアから声が上がり、

私は首を左右に振って……。



「隼斗さん、どうしたんですか?」



私は顔を曇らせた彼に訊ねた。



「ん…」

「隼斗さん?」

「ごめん、ゆのちょっといいか?」

「えっ?」



隼斗さんに腕を引かれ車から降ろされた。