家元の寵愛≪壱≫



「失礼致します。園宮様がお見えに…」


執事の杉下さんが父親の到着を知らせに…


「おぅ、そうか。ゆのちゃん、お父さんが到着したみたいだ」

「はい」

「ゆの、行こう?」

「はい!!」

「あなた、私達も」

「ん」


私達4人は揃って庭先へと。


門の方から玄関へと歩み寄る2人。


「お父さん!!」

「ゆの!!」


私は思わず駆け出した。


「ゆのちゃん、こんにちは」

「さゆりさん、こんにちは。先日はお世話になりました」

「ううん、私の方こそ楽しかったから…」



お父さんとさゆりさんはまだ籍を入れていない。

私達が1周年を迎えるまでは…と決めているらしい。

だからってわけじゃ無いんだけど。

恥かしくて『お母さん』ってまだ呼べてない。

こんなにも優しくていい人なのに。


心の中にいる本当のお母さんを思うと、

つい、言えなくなってしまう……私。

いつかは……お母さんって。