あたしを『琴音』と呼び、あたしは彼を『ヒョウ』と呼んでいた。



6歳の時、忙しい両親が海外へ行った。



それと一緒に、ヒョウも海外へ行ってしまった。



ヒョウの親が、うちに仕えていたから。



それから10年ちょっと、あたしは本当にひとりだった。



彼があたしの元へやってきたのが3日前。



小さかった頃の面影を少しだけ残したヒョウが、あたしを『お嬢様』と呼んで…。



傷だらけで、絵に描いたようなやんちゃ少年だったヒョウ。



『本日より、お嬢様の身の回りのお世話をさせていただくことになりました』

『ヒョウ…?』

『わたくしのことは、青柳とお呼びください、琴音お嬢様』

『へっ…?』



とにかく戸惑った。



あのヒョウの口から丁寧な言葉が出てきたからだ。



正直、今でも信じられない…。



「今日から高校2年生ですね」

「ん~…」

「制服、とてもお似合いです」

「ねぇ、ヒョ…じゃなくて青柳…」

「なんでしょう?」

「本当にあのヒョウなの?」

「はい」



ニコニコって…。