「拠り所・・・・・・?」


一臣の言いたいことが、今一わからない。

この結婚に互いの気持ちは不要だと、一臣なら知っているはずなのに。


「甘えるのが下手な方なんです。だから、どう優しくしたらいいのかも、わからない」

「・・・・・・?」


やっぱり、言いたいことがわからない。

真緒が怪訝な表情を浮かべていることに気づいた一臣は、苦笑して、またいつもの冷静な顔つきに戻った。


「状況が変われば、人の心も変わります。これは、社長の言葉でもありますが」

「結婚したら、気持ちが変わる、ってことですか?」


一臣は、どこか意味ありげに頷く。


「・・・・・・うまくいくと思いますか? この結婚」

「社長に不満があれば、いつでもおっしゃってください」


ハッキリ答える一臣に、真緒は苦笑する。


一臣は先にエレベーターへ向かい、真緒は渡された名刺を見つめる。


(状況が変われば、人の心も変わる・・・・・・)