純情彼氏



嫌がる橘をねじ伏せて本を取り上げた。


「………あんた、本当に乙女ね」

「…難しい本よめねぇもん」

「…だからって不思議の国のアリスはないでしょ」

「………可愛いじゃん。アリス」

もう諦めた顔をして橘は机に伏せた。


「まぁ…可愛いよね」

小さな頃はアリスに憧れた事もある。
可愛くて好奇心旺盛で、勇敢で頑張って不思議の国から帰ってきた心の優しいアリス。


「お前とは正反対だな」

笑いながら、橘は言葉を放った。
その言葉はきっと冗談半分だろうけど、あたしの心を抉った。