「……優美ちゃん。おじちゃんたちは?」



理由はどうであれ、息子が瀕死の重傷を負って入院しているのに、永輝くんの両親は一度も病院に顔を見せなかった。



「あいつらが来るわけねぇだろ」



病院の待合室のスミに設置された自動販売機。

ガコンと大きな音を立てて出て来た缶コーヒーを取った優美ちゃんが呟いた。



「あいつら、単身赴任してから一度も帰って来ないんだ。金だけはしっかり振り込んで来るけどな。私たちが死んだら帰って来るんじゃね?」

「そんな……」



永輝くんと僕の父親は血の繋がった兄弟で、勤務している会社も同じだった。

父さんが転勤になって、それを追うようにして伯父さんも転勤になった。

ただ一つ違ったのは、それぞれの母親の行動。



『優美がいるから大丈夫ね』