低い声でそう言った優美ちゃんの顔には苦悩の表情が表れていた。


そんなこと……僕にだって分かっている。

通報すれば永輝くんも、そして現場に向かったであろう啓介さんも捕まる。

だけど、このまま僕たちが動かなかったら、永輝くんたちは……。



「……永輝くんが死ぬのは嫌だ」



僕の目に、じわりと涙が溜まる。

目の前の電話機が涙で歪んで見え、瞬きをした瞬間に、涙が一滴すべり落ちた。



そんな僕の隣りで受話器を握りしめていた優美ちゃんが、無言で三桁の番号をゆっくりと押した。



「――もしもし………」