おばさんの足音が完全に聞こえなくなると同時に、突然、全身の力が抜けた。
あの日、買った指輪……。
『結婚するよ』
悲しそうな目をして、そう言った永輝くんが買った指輪。
それは、一緒にいることさえできない、柚羽さんとの結婚指輪だった。
どんな思いで、永輝くんはこれを買ったんだろう。
いったい何が原因で、柚羽さんの指輪を姉さんが指に嵌めていたんだろう。
そして、姉さんの指に嵌められた柚羽さんの指輪を見て、永輝くんは何を思ったんだろう……。
『遼太郎……。
人間は忘れることができる生き物なんだ。
俺も忘れるから……』
そう言った永輝くんの言葉を思い出し、僕の胸はキュッとしめつけられる。


