葛城たちの教護院(※)送りが決まったのは、中学二年の進級を控えた春休みのことだった。
「竹島くん、ありがとう」
伊地知の両親は、かつて伊地知が僕に言ったことと同じセリフを口にした。
僕は「ありがとう」と頭を下げられる立場なんかじゃない。
無念だけが胸に残る……。
「宗佑ったらね、口を開けば『竹島くん、竹島くん』で。あなたと友達になれたことが凄く嬉しかったみたいよ?」
「……でも僕は……、伊地知くんを守れなかったんです」
「……なぁ、竹島くん」
うなだれる僕の顔を、伊地知のお父さんが覗きこむ。
「たった一人を守ることも大切だけど、その一人を守りきったところでどうなる?」
「……えっ?」
「葛城くんたちが心を入れ替えない限り、何も変わらないんだよ」
「………」
(※……現在は児童自立支援施設へと改称)


