永輝くんの声も届かなかった。

歩み寄ってきた僕に気付いた葛城たちは、一瞬だけビクリと身体を震わせたけれど、すぐにニヤついた顔をした。


僕は無言で葛城の胸元を掴み、力任せに殴りつけた。

初めて反撃した僕の姿を見て、葛城も、その取り巻きたちも言葉を失う。

倒れこんだ葛城が、口元から流れる血を拭いながら身体を起こそうとする。

完全に起き上がる前にボコボコに殴ってやろうと詰め寄った僕を、永輝くんが止めた。



「やめろ」

「……止めんなよ!こいつら、ぶっ殺してやる!」



冷静さを失った僕は興奮して、止めようとする永輝くんに必死になって抗う。

永輝くんはいつもの冷静な態度で僕の身体を押さえつけ、葛城たちの方を振り返った。

葛城たちは『クラスメートを亡くした生徒』を演じるのに精一杯で、永輝くんが僕に付き添ってここに来たことに気付いていなかったのだろう。

永輝くんを見て、葛城たちは一斉に顔を強張らせた。



「……結崎……さん?」