「……いてっ!」

「男のくせに情けねぇ声出してんじゃねぇよ」



学校帰り、僕は永輝くんの家にいつも寄っていた。

殴られた傷跡を永輝くんの姉ちゃんの優美ちゃんに消毒してもらう。

優美ちゃんは僕より五つ年上で、来年の春に高校を卒業する。

永輝くんとは対照的で、気が強く、表情豊かな人間だった。

女ながらに喧嘩が強いことで有名で、中学一年の頃には三年生を抑えて学校を仕切っていたツワモノ。



「永輝くんは?」



ガーゼで被われた傷口を軽く触りながら、救急箱を片付ける優美ちゃんに聞く。

優美ちゃんは振り返ってにやりと笑った。



「部屋にいるよ。でも今は……あっ、おい、こらっ!」



部屋にいると知った僕は、優美ちゃんの言いかけた言葉を最後まで聞かずに永輝くんの部屋に急いで向かった。