余裕だ。

 真純はベッドの上に横たわったまま、パソコンに向かっているシンヤの背中を眺めた。

 未だに熱に浮かされたように、頭はぼんやりして身体はぐったりしている。
少しはマシになったようだ。

 かろうじて服は着たものの、極度の緊張から解放されたせいか、ずっとシンヤにしがみついていたからか、身体に力が入らず、起き上がるのも億劫だったのだ。

 シンヤが申し訳なさそうに、少し横になっていた方がいいと言うので、そのまま横になっているうちに眠っていたらしい。

 目を覚ますとシンヤは仕事をしていた。

 どれほど時間が経ったのか、カーテンが閉じられているので分からない。
 ただ、眠る前よりは明らかに暗くなっている。
 シンヤのいる机の上だけ、電気スタンドの灯りが点っていた。

 耳に残るシンヤの息遣いも、重なる素肌の温もりも、遠い夢のように感じる。
 けれど、下腹部に残るシンヤの痕(あと)が、もう妖精にはなれない事を告げていた。