瑞希は大丈夫だと言ったが、やはり途中で止まると怖いので、真純はエレベータには乗らず階段で下りた。

 家に帰った真純は、まっすぐ仕事部屋に向かいパソコンを立ち上げた。
 持って帰った書類を広げ、早速データ入力を開始する。

 少しして頭の中は、あさっての方へ飛んでいた。
 シンヤと瑞希がどんな話をしているのか気になって仕方がない。

 集中しなければと自分に言い聞かせて、努めて入力に専念するものの、少しするとうわの空になる。

 入力ミスがあってはまずい。
 真純は一つ息をついて、作業を中断した。

 こんなに気になるなら、余計な気を遣わずにあの場に残ればよかったと思う。

 不安でたまらないのに、平気なふりをして黙っている。
 けれど瑞希やシンヤには丸わかりで、かえって気を遣わせている。

 本当は全然強くもないくせに、強がったりするからだ。

 春にケンカをして以来、シンヤは真純を不安にさせないように、過剰なほど気を遣っている。