そしてその事実が、真純にとっては我慢ならなかった。

 会社や自分にとってダメージになる事にはきちんと対応するが、真純が相手だとずぼらになる。

 確かに毎回同じ説教を食らうだけで、高木の腹は痛まない。
 自分の仕事が軽く見られている事に腹が立って、在宅勤務に移行したのだ。

 真純の他にも在宅でデータ入力のアルバイトをしている者がいるので、特に問題はなかった。

 もっともアルバイトと正社員の真純とでは、入力しているデータの機密性は雲泥の差があるのだが。

 そんな経緯があるので、高木と真純は犬猿の仲だった。
 最初は冷静に注意していたが、繰り返される度に声を荒げ、終いには怒鳴りつけていたので、恐れられているのも頷ける。

 だが、どうして今頃、シンヤとそんな話をしたのか気になった。

 尋ねるとシンヤは、全く悪びれた様子もなく、とんでもない事をサラリと口にした。


「僕の彼女が真純さんだって言ったら、聞かれたんだよ」