とある神官の話







「シエナさん!」

「わ、ちょっとゼノンさん!?」

「おいこらあんた!」




 がしりと肩を掴まれ、ドアップで顔。それに思考が乱された。って近い近い!
 大丈夫ですか、と同じく聞いてきたハイネンに頷く。なんともない。ああ、なんともない。ただ――――気になるだけだ。

 なんでもない。なんでも……。



 後は現地の神官に任せ、引きかえしてきた私たちは、難しい顔をしたアーレンス・ロッシュのもとにいた。"見えた"ものを話すために。

 集まっていた幽鬼が、消えた。
 どういうことなのかわからない。目的が果たされたとしか思えないが、何が目的なのかわからない。




「炎と死体、か」




 私が両手で持つのは、ミルク入りのココアだ。アーレンスが用意したものである。ハイネンらもまた紅茶かコーヒーらを飲んでいる。
 私が話したそれらは、"召喚者"らしい姿がない。私が見たのは―――。

 炎。死体が無造作に転がり、まるで戦場だった。そこに、あんな場所にどうして「父が」
 そうだ。あちこち負傷し、何かを叫ぶ父がいた。ああ、どうしてあんな。




「父さんが、見えたんです」

「セラヴォルグが?」

「何か、叫んでいて……知らない人がいて、あれは」




 ―――何故わからぬのだ!

 声は聞こえるときと、聞こえない場合があった。まるでノイズがかるみたいに。映像はあるのに、音声は途切れ途切れなのだ。