そうして私は落武者を、薫は刀を、 えっちらおっちらと屋敷へ運んだ。 もちろん、念力で軽くして。 背中に担いだ落武者からは、血や汗の嫌な臭いがした。 それは軽い吐き気を誘う。 「あぁもうっ、どうせなら、芳しい香りのする美男子を拾いたいものだわっ!」 私は文句を言いながら、屋敷への道を急いだ。 背中で眠る彼が、その後の私の運命に多大な影響を及ぼすなんて。 まだ、何も知らないまま。