私はじっと、その落武者を見つめる。


どうやら、若者のようだ。


同い年くらいか、あるいはもっと下か。


しょうがない。


命のある者を、見捨てるわけにはいかない。



「薫、来なさい。大丈夫だから」


「は、はい~」



後から恐る恐る着いてきていた薫は、安心したのか小走りで近づいてきた。



「気を失ってる。

私が屋敷へ運ぶから、あなたはこの刀を持って」



落武者の傍らには、一振りの刀が横になっていた。


まるで、彼に寄り添うように。


それはきちんと鞘に納まっている。


見たところ、上等な物のようだ。


きっと戦場をこの落武者と共に生き延びたのだろう。


捨てていくのは忍びない。