「人を斬れば斬るほど、お前は神だと、味方に持ち上げられました。

人とは怖いものです。

毎日そう言われると、本当に自分は闘神ではないかと錯覚してしまうのです。

そのうち、人を斬る事自体が快感になっていきつつあることに、気づきました。

敵の血飛沫を浴びて、恍惚とする自分がいたのです」



戦の間の光景を思い出すように、まぶたを閉じて眉根にシワを寄せる博嗣。


彼の手は、硬くにぎりしめられた。



「……しかし幸いに、拙者は自分でそれに気づく事ができた。

そして、戦場から逃げました。

もう、拙者は人を斬りたくないと。

ただの快楽殺人者になりたくはないと」



そうか、そういうわけで……。


帰るわけにも行かず、音羽の土地に迷い込んで力尽きたわけか。



「……ごめんなさい……」


「?どうして姫様が謝るのです?」


「私、またあなたに人殺しをさせてしまった……」